祈りの地・﨑津で生まれる

ロザリオの塩

ロザリオの塩

出﨑 修平さん

深く入り組んだ羊角湾のほとり。キリシタン文化が息づく﨑津集落の一角にちいさな塩工房「ロザリオの塩」があります。

旧道沿いに広がる祈りの歴史のある漁村

﨑津トンネルを抜け、国道389号から旧道へ。旧道を歩けば、いつもと違う風景が見えてきます。穏やかな入り江に佇む薄いグレーの尖塔は、「﨑津教会」です。潜伏キリシタンの歴史遺産が点在する地として知られるこの地域。キリシタン禁制が解かれた明治6年以降、カトリックへと復活する信者が増え、小さな教会での礼拝が行われるようになりました。禁教下の絵踏みが行われていた庄屋役宅跡に現在の教会がつくられたのは、昭和9年のこと。密集した漁村集落にとけこむゴシック様式の教会は、長崎の建築家・鉄川与助によるものです。静寂な祈りの場と、漁村の日常が共存するこの集落の一角で、出﨑修平さんは塩づくりを行っています。その名も「ロザリオの塩」。ロザリオとは、キリスト教徒たちが用いる数珠状の祈り具のことをいい、﨑津の潜伏キリシタンらも密かに信仰で用いた信心具のひとつです。

幼い日の記憶をたどり、製塩に挑戦

自動車の整備士として働き続けた出﨑さんが塩づくりを始めたのは、10年ほど前のことです。当時、出﨑さんの脳裏に浮かんでいたのは、幼い頃、近所で見かけた製塩の光景でした。
「ドラム缶を半分に切って、海水をひたすら煮詰め、ようやくできる塩も丼一杯あるかないかだったと思います」。
記憶をたどり、見よう見まねで始めた塩づくりでしたが、実際にやってみるとわからないことも多く、「いつになったら塩になるのか、全く見当もつかなかった」と、出﨑さんは振り返ります。あちこちで見聞きしながら、ようやく行き着いたのは、流下式塩田というスタイル。上から下へ何度も繰り返し循環させながら濃縮した海水を、出﨑さんは「釜炊き」と「天日干し」のふた通りの塩に仕上げます。「釜炊きで特に難しいのは仕上げ時の見極めと火力の調整。仕上げの火力が弱いと結晶にならないし、かといって強すぎると塩が鍋に焦げつき、商品として使えなくなります。タイミングの見極めが難しい。天日干しでは、夏場は粗い粒になり、冬は粒になりにくいなど、お天道様の力によって、塩のできるスピードや粒の状態も変わるんです」。

工房の先に見える夕景

海のミネラルたっぷりの藻塩、新しい一歩に期待も

出﨑さんは塩づくりを始めてから、身近にありすぎて気づかなかった地元・天草の海の豊かさに気づいたといいます。そうして生まれたのが、クロメ、カジメ、ヒジキから抽出した海藻エキスを天日塩にブレンドした藻塩です。
「この海の豊かさを広く伝えることは、私たちの使命でもあると思うんです」。
塩づくりをはじめて10年。思いを新たにする出﨑さんのもとにある日、うれしいニュースが飛び込んできました。それは、「ロザリオの塩」を使った菓子が生まれる、というものです。
「まさか自分が作った塩が大手菓子メーカーで使われるとは思ってもみなかった。塩づくりは手間がかかって大変だけど、こうして多くの人たちに味わってもらえる商品となることで報われた気がします」と、にこやかに話しました。

火力の調整をしながらじっくり釜炊き

﨑津集落の一角にある、出﨑さんの工房

ロザリオの塩

〒863-1203 天草市河浦町今富516 TEL 0969-79-0400・080-5204-1827

【採水場所】羊角湾 【工程】風で濃縮し、天日干し&釜炊き 【おすすめ食材&料理】魚、寿司、フルーツなど

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