板前、 漁師をへて、 塩職人へ。

海と食を見つめた人がつくる、
完全天日の塩

ふくだの塩工房

福田 忠昭さん

200頭を超えるミナミハンドウイルカが生息する通詞島沖。島のいたるところで、波間に躍る愛らしいイルカの姿を見ることができます。「ふくだの塩工房」は、海を見渡す丘の上にある工房です。

火を一切、使わない。完全な天日干し

二江漁港近くの入り江には、家々がひしめき合うように立ち並びます。聞こえてくるのは、タプンタプンと船底をたたく波の音。地元で「せどや」と呼ばれるこみちの真ん中を悠然と歩く猫の姿を眺めていると、時が過ぎていくのを忘れてしまいそうになります。漁港から歩いて数分、通詞大橋を見下ろす高台で南国風の屋上ハウスを見つけました。ここが「ふくだの塩工房」です。
福田忠昭さんは3年間の研究・試験期間を経て、2008年から塩の製造販売を始めました。福田さんの製法はいたってシンプルです。海水を汲み上げ、結晶棚に移したら、ハウスのなかで天日干しに。そこからは、太陽光でハウス内の気温が上がり、その熱で水分が自然蒸発していくのをひたすら待つのです。その間、なんと1か月強。
「1か月というと、“冗談でしょう”と笑う人もいますが、ハウスのなかが完全に温まらないと蒸発ははじまりません。曇りや雨の日は、室温が上がらないだけでなく、せっかく乾燥しはじめていた塩も湿気が戻ってしまうんです」。「時間は長くかかっても、出来上がる商品の美味しさには変えられない」と語る福田さん。まさに、太陽と時間(とき)が育てる塩と言っても過言ではありません。

海の恵みに生かされる元漁師ならではの思い

一見、非効率にも思えるこの製法を貫くのには、福田さんなりの視点と思いがあります。
「ここはなにしろ、潮流がいい。通詞島の周辺は、栄養豊富な川の水が流れ込む有明海と、黒潮の流れが合流する場所なんです。プランクトンが多く発生し、豊かな藻場が広がっている。藻のあるところにはウニやアワビ、イワシやサバなどの小魚がいて、そこにイルカが寄ってくる。こんなに豊かな海は、他にはないでしょう」。
大阪で板前修業をしたあとにUターンし、20年ほど一本釣り漁を営んでいた福田さん。旧五和町漁協の組合長を務めた時期もあったというだけに、豊穣の海を語るその言葉はどこか誇らしげです。
「この海域の漁師たちはイルカと共存し、漁の時間を制限するなど“獲りすぎない漁業”によって海の恵みを大切にしてきました。私にとっては塩づくりも同じこと。効率よく大量につくるのではなく、できるだけ手を加えずに、自然の力でできた塩は、この海の豊かさの象徴でもあると思うんです」。

ふくだの塩工房から臨む「通詞大橋」

仕上げはにがりで三度洗いキラキラとした輝く塩

「ふくだの塩工房」では、潮時によって、海水を汲み上げる位置も変えています。満潮の時は島の南側、干潮の時は島の北側から。塩づくりに適した海水を見つけるのも、美味しい塩づくりへの福田さんのこだわりです。また、海水を天日干しにする場合、季節や天候によって結晶化するスピードが異なり、粒の大きさも変化しがちに。福田さんは天日干しの工程の合間合間で適度にかくはんすることで、粒が大きくなりすぎない工夫をしています。「手間のかかる作業ですが、粒の大きさが変われば、味わいも使い勝手も変わります。さらに、できた結晶をにがりで三度洗いすると、粒に艶が出る。かくはんや三度洗いといった、ひと手間ひと手間が、品質に直結するから、省くわけにはいかないんです」と福田さん。板前経験を持つだけに、使い勝手も重視した商品づくりに懸命です。

福田さん自慢の屋上ハウス

ひたすら天日干し。冬場は1か月以上もかかるそう

ふくだの塩工房

〒863-2421 天草市五和町二江127-1 TEL 0969-33-2070

【採水場所】早崎海峡 【工程】全工程天日干し 【おすすめ食材&料理】フルーツ、そば、おにぎり、揚げもの

PAGETOP