強い北風で海水を濃縮。 そして天日で結晶化

完全天日塩 はやさき

自然食品研究会

木口  孝さん

白い砂浜とコバルトブルーに輝く海。通詞島の北側には、天草のどことも違う表情の海があります。「自然食品研究会」の完全天日塩は、そんな絶景のなかで生まれています。

早崎海峡に浮かぶ島。Uターンで塩づくり

天草下島と島原半島との間の海峡は「早崎瀬戸(早崎海峡)」と呼ばれています。この海峡に浮かぶ周囲4キロほどのちいさな島が、通詞島。対岸の天草下島とは今でこそ「通詞大橋」で数分の距離ですが、1975年以前は渡し船が唯一の交通機関でした。「昔は学校へも、手漕ぎの渡し舟で行き来していました。島と島との間は潮の流れが特に速く、台風などが近づくと島の子どもたちはすぐに呼び出され、海が荒れる前に早々と帰されていましたよ」。
 風や潮に影響されやすい島のくらしを教えてくれたのは、「自然食品研究会」の木口孝さんです。木口さんは熊本市内で生まれ育ち、小学2年の頃から中学卒業までを父の故郷である通詞島で過ごしました。国内外でエンジニアとして働いたのち、1997年からこの島で塩づくりを始めました。

豆腐屋を志し、にがりが欲しくて、塩づくり

 「もとはといえば、豆腐を作りたかったんです。でも、商売にしようと思ったら一丁千円ぐらいで売れるものを作らないと見合わない。そのためには良質なにがりが必要です。ならば、塩を作ってにがりを取り、それから豆腐を作ろうと。ところが、にがりが健康的な食材としてメディアで取り上げられるようになり、注文に追われて豆腐を作る暇もなくなりました」。豆腐作りを志し、そのためのにがりを求めて、塩づくりに着手。と、ちょっとユニークなきっかけで始まった、木口さんの塩づくり。さまざまな本を読みあさり、模索しながらたどり着いたのが、「流下式塩田」という製法でした。

ハウスのなかには、濃縮したかん水を入れた棚がずらり

島の北側、年中吹きすさぶ強い風が塩分を濃縮させる

 高さ約6メートル、横幅約20メートルもの巨大な櫓(ろ)に流水ネットを垂らし、海水を上から流し入れます。一旦タンクに戻し、再び櫓へ。何度も循環を繰り返しながら太陽と風を浴びせ、水分を蒸発させていくのです。こうして生まれる濃縮海水を「かん水」と呼び、塩分濃度が12%ほどになるまで夏は4〜5日、太陽光が弱くなる冬場には10日ほどかかることもあるといいます。
 かん水を太陽の光によって結晶化。これをさらに、塩分濃度25%以上のにがりで洗い、ゴミなどの不純物をとって遠心脱水。できた塩を粒の大きさによって3種類に分け、袋詰めし、「はやさき」の塩が完成します。

塩分濃度が12%くらいにあがるまで、循環をくり返す

天日干しによって結晶になりはじめた塩

濃縮、結晶、そして選別。粒選りの塩ができるまで

木口さんの工房は、通詞島の北側に位置します。周囲に見えるのは、畑と風力発電の風車、灯台、そしてどこまでもつづく海原だけ。この工房から見渡す範囲に、民家は一軒もありません。「北風が強すぎて家がもたないんですよ。暮らすには不向きだから、島の人にとっては南が正面で、こっちはうしろ側。でも塩づくりにはありがたい場所です。」風が強ければ強いほど、蒸発は早まります。とはいえ、自然はそう都合のいいことばかりでもありません。遮るもののないこのあたりは、台風が近づくとなすすべもなく、2年連続で櫓が崩壊してしまったこともあるほど。それでも木口さんは、この場所で塩を作ることをやめませんでした。「維持するのは大変だけど、自然からそれ以上のものをもらっています。一人だからそんなに量は作れないけれど、できた分だけ、ですね」。目の前に広がる美しい海を眺めながら、木口さんはそう語ります。

自然食品研究会

〒863-2421 天草市五和町二江106 TEL 0969-33-0610

【採水場所】通詞島北側の近海 【工程】風で濃縮し、天日干し 【おすすめ食材&料理】揚げもの、肉、魚、野菜

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