天草の塩文化発祥の島

太陽と風と火の力でつくる塩

ソルト・ファーム

小出 竜市さん

通詞大橋を渡り、左へ車を走らせること約3分。右手に見えるのが「ソルト・ファーム」です。天日と釜炊きの2種の方法で、年間約10トンの塩を製造しています。

島の若者に新たな道。家族ぐるみで、塩づくり

3つの塩工房が点在する五和町の通詞島。なかでも最初に設立されたのが、「ソルト・ファーム」です。1989年、創業者の長岡さんが、天然塩研究の私的な試験場として開いたのがはじまり。1997年に「塩専売法」が廃止され、海水からの製塩が正式に認められる頃には、“通詞島の塩”についての噂が少しずつ広がり始めていたといいます。
同社の代表を務める小出竜市さんは当時を振り返り、こう話します。
「私たちがソルト・ファームに関わるようになったのは、姉がこの地を訪ねたのがきっかけです」。
当時、熊本のテレビ放送局のアナウンサー兼ディレクターであった竜市さんの姉・史さんは、取材でこの地を訪れ、長岡さんのつくる塩の味わいやその思いに心を動かされたそう。

写真左から、滝崎幸太郎さん、小出竜市さん(代表)、福田はつねさん、福田良太さん

 「“この美しい海からつくられる塩の価値を、もっと多くの人に伝えたい”。そんな思いもあったのでしょう。姉はまもなく独立し、熊本市内の古い町家や商家が立ち並ぶ一角にアンテナショップ『ソルト・ファーム 塩工房』をオープンしました」。 卸売業界にいた竜市さんも加わり、商品開発・販路拡大を続け、ソルト・ファームは会社組織に。数年後、長岡さんは新たな研究の対象を求めて新天地へ移りましたが、「彼が後進に技術を伝えてくれていたおかげで、今があります。天日塩も釜炊き塩も、創業時からほとんど変わらぬ製法で、毎月約800キロを製造していますよ」。竜市さんはそう言うと、釜炊き小屋へと案内してくれました。

通詞島の南岸にあるソルト・ファームの工房

作る人と伝える人、2つの力がつむぐ縁(塩)

パチッバチバチッとダイナミックに薪の弾ける音が響いてきました。もうもうと湯気の立ちこめる小屋へ入ると、呼吸をするたびに口のなかが塩気で満たされるのを感じます。
ソルト・ファームでは薪の火で炊き上げる「釜炊き塩」と、太陽の光と熱で結晶化させる「天日塩」の2タイプの塩を製造しています。結晶化した後、ザルに上げ、にがり成分と水分を取り除きながら熟成させていきます。
大釜の縁に立ち、海水をかき混ぜるのは、福田良太さん。製造のチーフを務める良太さんは通詞島の出身で、高校卒業後は島を出て料理の道へ。20代半ばで帰郷し、創業当時からのスタッフでもある亡き父・健二さんと母・はつねさんから塩づくりの指導を受けた良太さんは今、工場長として塩づくりに励んでいます。
「以前は海ってどこもこんなものだと思っていました。だけど、一度島を出てみると、通詞の海の美しさがどこにでもあるものではなく、とても貴重なものだと気づきました」。
良太さんはこの海で生まれる塩のおいしさを再認識したといいます。
「これまで、より甘い塩を作れるように研究を続けてきました。火の入れ方や炊く時間などによって、塩の味わいも変わります。にがりを取りすぎると辛くなるし、残しすぎると苦くなる。その見極めは、職人でなければできないんです。ソルト・ファームの塩は、通詞島の海と風と太陽の力に加えて、製造を担ってくれる職人たちの努力の賜物でもあると私は思います」と、竜市さんは話します。

太陽の光で満たされたハウスで天日塩が作られる

出来上がった塩はひとつひとつ丁寧に手詰めする

ソルト・ファーム

(直売店)〒860-0028 熊本市中央区中唐人町29 TEL 096-355-4140
(製塩所)〒863-2421 熊本県天草市五和町二江650 TEL 0969-33-1834

【採水場所】早崎海峡 【工程】釜炊きと天日干し 【おすすめ食材&料理】肉、魚、揚げもの、吸い物など菜

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